Archibel社

 

2014年2月19日

 

 

人は身に余る体験をしたときに、初めて謙虚になれる存在みたいです。

 

ドイツもあと4日になった今日、Synthesis、そしてradarの生みの親である、Dr.Frederik Schroyenに会わせてもらってきました・・・。そして、radarの会社も。radarで働いている人たちにも(@ベルギー)。

 

一つ一つのルーブリクスを、その出典をたどりながら。その過程では、その出典のもとになった、さらなる出典を探し出し、丁寧に、最も合った言葉を探していく。たとえば、ケント自身が、翻訳の間違いをしている箇所もあるわけです。それを現代の人が、見つけ出し、よりよいルーブリクスに訂正する。そのような地道な作業が、毎日毎日、行われていて、また、新しい本が出ればそのレメディーも、更新されてレパートリーに付け加わっていく。

 

まさにレパートリーは、「生き物」なんだと。各地のホメオパスや、ホメオパシー従事者が日々、作り上げている芸術なんだと。実感しました・・・。

 

たかが数年学んだだけの、私のプライドとか、野心とか、そんなもの、ホメオパシーを深く学んだ人たちの編み出す、こんな偉大で深い仕事の前に、本当にクソだったなと。

 

誰かより秀でるとか、そんな私みたいなちっちゃなことじゃなく、Dr.Schroyenは本当に、質のいいホメオパシーのツールが、みんなの手にわたることを願っていて、経験の深いいろんな人たちが、無私に日々、研究、更新を積み重ねているのでした。

 

ごめんなさい、という感じでした。何か神に続いているんじゃないかと思えるような、偉大な仕事(でも地味で地道)を前に、自分が本当にちっぽけに思えました。ドイツを少し経験したくらいで、調子にのっていた最近の自分がすこぶる恥ずかしいです。なんか風邪引きそうな勢いなので、とりあえず今日はここで終わります。

 

でも、私につながる、ほぼすべての人に謝りたいです。

なんででしょう。

 

P.S. 今日、radarで教わった情報は、なんらかの形でみんなにもお伝えできればと思います。不勉強な私にとってはですが、ルーブリクスを見る目が変わりそうな、ショックな一日でした。

 

2014年2月20日

 

 

Frederik Schroyen博士に会えると言われて、ぜひ聞いてみたいと思っていたことの一つが、ルーブリクスの読み方についてでした。

 

Hundseder先生のもとで勉強させてもらう中で、ドイツ語のルーブリクスに触れさせてもらうようになりました(実はHundseder先生はドイツ語しかできないという、珍しいドイツ人なのです・・・)。そして驚いたのですが、ときにドイツ語のルーブリクスは、英語よりもさらに詳しく、実感につながるような言葉が選ばれてあるように思えたということでした。

 

たとえば、

COUGH-IRRITATION

が、

Husten-Hustenreiz

(咳ー咳がしたくなるような刺激)

となっていて、あの、咳がしたくなるような、どうしようもないムズムズ感が伝わってきたり。

 

GENERAL-MENOPAUSE-ailments from

が、

Allgemeines-Menopause-Beschwerden durch

(一般的なことー閉経ー病苦が〜から)

となっていて、ああ、ailmentとは、きっつーい、のしかかるような苦しみと感じていいのか〜と思ったり。

 

WARMBLOODED persons

が、

Warm ist; Personen, denen es meist

(いつも大抵温かい人)

となっていて、おお、温血がより説明されとる!と思ったり。

 

GENERAL-Numbness

に、

Allgemeines-Gefühllosigkeit, Taubheit

(一般的なことー感覚がなくなった感じ、麻痺・しびれ)

という言葉があてられていたり。

 

でも、これは、私が英語圏で暮らしたことがなくて、英語になじんでいないから、よりなじみのあるドイツ語が胸に響くのかもしれないしなとか。それに第一、もともとはKentがつくった英語のレパートリーが基礎になっているものなわけで、ドイツ語よりは英語のほうがよりオリジナルと言っていいものだよなと。

 

それでぜひ、こうした疑問を中心に聞いてみようと思って、radarに出かけたのでした。

 

最初に出迎えてくれたのは、Daleさんというおじさんでした。明るく、気さくなオーストラリア人で、今日は私の送り迎えをしてくれる人なのかな?くらいに思っていたのですが、実はこの方こそ、archibel社の全容を把握し、マネジメントしている影の立役者のような、一目置かれる存在だったことがどんどんわかっていきました。

 

Daleさんは、ホメオパスではないのですが、普通にいるホメオパスよりもずっと、ホメオパシーの哲学を深く理解し、ホメオパシーの知識も豊富でした。仕事やプライベートでも、ギリシャのVithoulkasのもとに通い、授業や治療を受けているということでした。昔はオーストラリアの弁護士をしていたそうです。いつも、問題を解決するのが好きで、ホメオパシーの勉強もそこが楽しいし、仕事で起きるいろんな問題も、よりポジティブな解決を編み出すのが好きなんだということでした。

 

最初に連れて行ってもらったのは管理課で、注文を受けて発送したり、お客さんの送ってくるさまざまなPC関係の問題を解決したりといった部署でした。それが、Namurの近くにありました。ソフトウェアをつくる技術部門は、今、イタリアに完全移管したということでした。

 

次に車で1時間半ほど乗って、連れて行ってもらったのが、Dr.Schroyenの自宅兼診療所近くにあるオフィスでした。ここでは、Anさんという、とてもかわいらしいおばさまが出迎えてくれました。ここが、レパートリー『Synthethis』の内容を日々更新している、いわば研究部門でした。

 

Radarと言えば、Dr.Schroyenがその中心にいるイメージですが、Dr.Schroyenは、診療、研究、授業という3つの仕事を常に続けているという超多忙な方で、Synthethisの更新は、Anさんともう一人の女性の同僚との二人が、Dr.Schroyenの指示を仰ぎながら遂行している、ということでした。

 

Anさんの仕事は、新しい本が出たら、その本に載っている新しいレメディーをルーブリクスに付け加えたり、新しいルーブリクスを付け加えるか考えたりすることでした。新しいルーブリクスをつくるよりは、なるべくそれに近いルーブリクスに入れたりしているそうで、それでも新しいルーブリクスをつくらなければならないようなときは、最終的にはDr.Schroyenの判断をあおぐということでした。そしてDr.Schroyenが、このルーブリクスは本当に必要か、この症状は本当にこのレメディーに必要なものなのかを判断するということでした。

 

またAnさんは、海外のホメオパスや、ホメオパシー従事者たちから、ルーブリクスについての疑問や指摘を受けて、それをradarに反映させる、という仕事もしていました。radarは、英語のほか、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語の、全7カ国語に翻訳されていて、そういう指摘は、各国の翻訳者たちが送ってくることが多いそうでした。というのは、翻訳というのは、そのルーブリクスについて、それが本当には何を意味しているかを考える必要に迫られる作業であり、それをやっている途中ではどうしても、理解できないルーブリクスが出てくるものだから、とAnさんは言っていました。

 

そして、やはりわからないとなったとき、調べるのは、そこに載っている各レメディーの出典になるわけです。Repertoryというのは、もともとはマテリアメディカから来ているわけですから、たとえばケントのマテリアメディカを調べたりしていると、とんでもない事実がわかったりするわけです。

 

たとえば、ケント自身がハーネマンのマテリアメディカを誤訳していた!(いろんな例を見せてもらったのですが・・・書き留めておけばよかった・・・)

 

また、マテリアメディカは、いろんな人がほかの誰かから聞いた情報を書き写しているものなので、書き間違いがあり、それがそのままルーブリクスになってしまっていたり。(最近では、walkingが、本当はwakingだった!という面白いミスがありました。MIND-DELUSIONS-friend-never seen his friends; he had-walking; after)

 

Anさんもこれには笑っちゃったーと言っていて、「起きてすぐに寝ぼけ眼で、近くにいる人を、え、この人誰だっけと思うことはあり得ても、歩いたあとに友達を忘れる人は、ちょっといないわよね、それだとかなりおかしなことになるわよね」と楽しそうに話していました。

 

そして興味深いことに、そうした指摘が飛び抜けて多いのが、Peter Wind(Wend?ちょっとわかりませんでした)というドイツ人翻訳者だということだったのです。上記もすべてPeterさんのものでした。このPeterさんという人は、radarでもかなり重宝されている存在みたいで、Daleさんの話にもよく出てきました。ホメオパシーはもともとがドイツ語ということもあり、Peterさんは翻訳を考えるとき、Kentが英語にした、そのさらにオリジンであるドイツ語を探してもってきたりするそうなのです。だから、私が考えていた、「ドイツ語のほうが、より詳しく、生活感がある気がする」という指摘も、もっともなんだよ、と言われました。

 

うわーすごいな、Peterさん! そしてAnさんも、Peterさんから来る(翻訳を終えても、未だに訂正を送り続けているというのがすごい!)、長い指摘の数々を、オフィスにある図書室から古い文献をもってきて、調べ(Anさんもドイツ語やフランス語ができる人でした)、一つずつ確認していき、訂正を続けているのでした! つまりSynthethisは、Kentをもとにしながらも、どんどん原点というのでしょうか、ホメオパシーの神様と言っていいでしょうか、に近づき続けている、そういう「生き物」なんだということが、胸に押し寄せてきて、いや、頭かな。私の頭は、昨日はパンクしそうなくらいに、膨れ上がっていたのでした。

 

Anさんの仕事はほかにも、意味がわからないルーブリクスの原文をたどっていって、本当の意味がわかったとき、もともとのルーブリクスを消さずに、新しいルーブリクスへ移行させるような誘導文を加えたりすることや、もしレメディーがそこのルーブリクスに実際はふさわしくないとわかったときも、そのレメディーは消さずに横線を引いてしまって、しかもその理由が、そこをクリックすると読めるようにしておくことだったりしました。

 

それは、Radar Opusという最新ソフトではまだ読めなくて、その前のRadarだけでやっているサービスなのだそうですが、1年以内にはRadar Opusにも加わるわよ、ということでした。

 

ちなみに、あるルーブリクスの意味がわからないとき、出典をたどるにはどうすればいいんですか?と私が聞くと、各レメディーの横には、ほんの小さく、どこからの出典かが書いてあるから、それで誰がこのレメディーを、この症状に推したかがわかる、その人の文献から、その症状のキーワードを検索するのよ、と教えてくれました。あ、そっかー、言われてみればその通りなのに、今まで、このルーブリクス、意味わかんないや、仕方ないな、でほっといた自分が恥ずかしかったです。

 

そしてさらにAnさんは、すごいプレゼントをくれました。なんと、ルーブリクスの意味がわかりにくいように感じたら、私にメールしていいよ、ということでした。しかも、そのメールアドレスは、ほかの日本のホメオパスたちにも希望する人には教えていいよ、と。そして、ちゃんと返事を書くから、と。ああ、日本のホメオパシー仲間への、何よりの土産ができたと。心からうれしかったです。

 

Anさんが今、力を入れているのは、Jan Scholtenが出した最新刊、『Wonderful Plants』を、Synthethisに取り込む作業でした。まだ知られていないレメディーがたくさん入ってる、とてもいい本だわよ、と。そして、この仕事は本当に楽しいの、と目を輝かせていました。こんなAnさん、そしてPeterさん、そして世界中のホメオパシー関係者や書籍からの思いを受けて、日々、生長し続けているSynthethisの存在が、今までになく愛おしく感じられました。

 

私が、「でも、Synthethisにはレメディーが増え続けていて、逆にレパートリーとして使いづらくなったという声もあるんです・・・」と言うと、「あ、それはね。実はどれくらいのレメディーがほしいのかは、自分で選べるのよ」と言って、Anさんはそのやり方を教えてくれました。Full repertoryだと全部入るけれど、Modern to 1987とか、Kent+Provingとか、いろんな仕様があることを知りました。いやー恥ずかしながら知らなかった・・・。

 

Radarは、もともとが大学の教授の考案で始まったものということもあり、日々、更新し続けているホメオパシーに合わせた、アカデミックな立場を大切にしているんだ、とDaleさんは言っていました。シェアは確か、3分の2くらいがなんとドイツだそうで! Daleさんによると、ホメオパシー人口は、イギリスよりドイツのほうが多いんだよ、ということでした。知らなかった・・・(ホメオパシー人口で言うと、インドにはかなわないはずですが、インドにホメオパシー留学中のお友達の話では、PCを持たない学生がほとんど、ということでした)。

 

最後になんと、Dr.Schroyenに会わせていただいたのですが!!! Anさんにほとんどすべての質問を投げて、聞き尽くしてしまっていた状態だったので、「さあ何でも聞きなさい。日本では反対かもしれないが、この国では先生に質問をしないのは失礼なことになるんだよ」と言われたときに、本当に困ってしまって。でも最後には、Dr.Schroyenも、「僕は忙しいから、Anには、いろんなことを自分でできるように、ほぼすべて教え込んであるからね」と満足げでした〜。ほっ。

 

いや〜、でもこの一日が終わると、本当に頭も気持ちもいっぱいいっぱいになってしまって、それなのに今日は5時半に目が覚めると、まずはこのことをみんなに書かなければと、気づけばもう5時間、PCに向かっています。そろそろホテルのチェックアウトなので、ひとまずここで終わります。ドイツ通信も、これで終了になります。読んでいただいた皆様、長い間、駄文にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。また日本で会いましょう!