Arnica

 

キク科ウサギギク属 Arnica Montana

 

「ケガにはArnica」とよく言われますが、Arnicaというレメディーをよく言い表す言葉があるとすれば、「ケガとトラウマ」です。

 

出血したような状態や、打撲してヒリヒリして、ちょっと触れただけでイタタタタとなる感じ。英語で言うとsoreということになりますが、ちょっと触れただけでイタタタとなる、ヒリヒリした痛み。

 

痛みは、大事な表現の一つです。どんな痛みなのか、というのは大事な情報になります。たとえばHypericumの痛みの特徴は、神経を走るような、ズキーン、ズキーンとしたもの。かたやArnicaは、ちょっと触れただけで痛い。

 

利用するには、痛みにしても、精神的にも、そのレメディーがどんな質なのか、ということを理解する必要があります。Arnicaだと、尊厳、プライド、そしてトラウマが関係しています。

 

ある種、Arnicaは、トラウマになるくらいの衝撃、打撲を受けたわけです。通常の状態から、いきなり、どこかに叩き込まれるような衝撃を受けます。想定していたところから、ダーンと叩き込まれた。そして、尊厳が傷つけられたのです。

 

Arnicaをよく表すのが、「私は大丈夫だから」という言葉です。「大丈夫だから」と、医者を追い返すような。一人にしてほしいような。階段に引っかかってケガをした。でも、「大丈夫、大丈夫」と言って、傷つけられた自分を認めたくない。「大丈夫、大丈夫、私は大丈夫」と言っていて、でも全然大丈夫じゃなかったりします。

 

キク科は、ケガに非常によく使われているレメディーです。マテリアメディカを見てみましょう。マインドの症状、「ビクッと目が覚める」。大丈夫と思っているけれど、寝ているときに、自分の中に折り畳まれていたトラウマが出てきます。夜に事故後の恐怖が残るわけです。トラウマによる恐怖にはOpiumというアヘンのレメディーがありますが、Opiumの場合は恐怖が昼にも残ります。

 

ほかのマインドの症状として、「些細な症状を誇張し、心配する」という像があります。これは、たとえば症状をもってつらいとき、自分はこんなにつらいんだよ、と言いたくなる状況です。足をぶつけて痛い思いをしているのに、大したことないように扱われたとしたら、人間どうなりますか? ある種のプライドが傷つけられたような状態になる。そして、「自分はこんなに痛いんだよ」と言いたくなります。

 

さきほどの、「自分は大丈夫だから! 大丈夫です」というのと逆のパターンですが、そういうことも対極としてあります。どちらも、プライドとか、トラウマを受けた、ということが中心にあります。

 

ほかには、肉体的、精神的なショックから発症、というときにもいいレメディーです。Arnica的な出来事が起きて、そこから抜けられないとき。身体全体が過敏で、比喩としては「一人にしてほしい」「触らないで」となる。

 

これは、時差ぼけにも使われます。時差ぼけのナンバーツーレメディーです。時差ぼけを考えるとわかると思いますが、自分が通常動いているペース、それとは違うところに叩き込まれて、症状が出てくるわけです。レメディーを学ぶときは、とにかく中心的な何かを意識していただいて、その人に何が起こっていて、どんな反応をするか、というところを見ます。

 

ちなみに時差ぼけナンバーワンは、Cocculusというレメディーです。神経的なところでの麻痺が特徴で、時差ぼけだったり、介護疲れだったり、育児疲れだったりと、自分のペースを乱されるような状況に対応しないといけない状態です。疲弊して、どんどん対応できなくなる。マイペースなだんなさんに合わせている奥さんにもあてはまります。甲斐甲斐しく働いて、疲労して、麻痺していく感じ。神経的な麻痺がなければ、Cocculusではありません。神経の伝達が遅くなるまで、人のペースに合わせて疲労してしまうのがCocculusです。

 

●その人がCocculusを摂っても、周りの人のマイペースが変わらなければ元に戻るのでは?

 

Cocculusを摂ったときどうなるかというと、そこにある程度慣れてきて、対応できる力ができる、ということが起こります。そこに、振り回されないといけない何かがなくなる。すると、周りもその人を振り回すということがなくなってきます。対応する力、というのは、わがままを言える力ということでもあります。