ホメオパシーの基礎

① ポテンタイゼーション

② レメディー

③ プルービング

④ マテリア・メディカ

⑤ レパートリー

 

 

① ポテンタイゼーション

ポテンタイゼーション(potentization、ハーネマンはドイツ語でDynamisierungダイナミック化と呼んでいます)は、潜在力活性化を意味します。これは、希釈震盪を繰り返せば繰り返すほど、物質に眠っている潜在的な力が活性化していく、ということを意味しています。ホメオパシーの調剤薬局では今日も、このポテンタイゼーションの作業を行い、レメディーを製造しています(写真上)。震盪作業は、今は機械でやることが多いですが、あえて手作業で行っているところもあります。

 

 

また、ホメオパシーで使われる用語、ポテンシーとは、それぞれのレメディーが、どれくらい薄めて振ってを繰り返しているか、をはかる単位です。そのレメディーがどれくらいの潜在力(ポテンシャル)をもっているかをはかる単位とも言えます。

 

 

現在、セルフケアでよく使われるレメディーは、

100分の1を30回繰り返した「30C」

というポテンシーのものです。

 

 

専門のホメオパスになると、30Cのほか、

100分の1を6回繰り返した「6C」

100分の1を12回繰り返した「12C」

100分の1を200回繰り返した「200C」

100分の1を1,000回繰り返した「1M」

100分の1を10,000回繰り返した「10M」

100分の1を50,000回繰り返した「50M」

100分の1を10,0000回繰り返した「1CM」

などのポテンシーも使います。

 

 

※ 希釈度を治療中にだんだん上げていく、LMポテンシーという投与方法や、10分の1希釈を繰り返した、6〜12Xポテンシーのティシューソルトを使う場合もあります。

 

 

おおまかに言えば、ポテンシーが上がるにつれて、レメディーは、

より身体的なところ(〜30C)

より感情的なところ(200C)

より精神的なところ(1M〜)

へと、作用する場を深めていくことが知られています。ですから、患者さんがどの領域において、最も苦しんでいらっしゃるかによって、ポテンシーを使い分けるのです。たとえば、より身体的なところだと30C、より感情的なところだと200C、といった具合です。

 

 

※ どうしてそんなに薄めたものが作用するのかが気になる方は、「どうして効くの?」へ。

 

 

 

② レメディー

 

こうしてポテンタイゼーションが行われた溶液を、砂糖玉にふりかけたものを、ホメオパシーではレメディー(remedy、ラテン語で治療薬の意味)と呼び、お薬として使っています。

 

 

原料には、植物、鉱物、動物、病変組織などがあり、よく使われるものとしては約200種類ほどのレメディーがあります。現在では約3000種類のレメディーがあり、また日々、新しくつくられ続けています。

 

 

 

③ プルービング

 

しかし、レメディーはつくられるだけでは意味がありません。そのレメディーがどんな作用をもっているか、すなわち、どんな状態にある人に処方すれば治癒的に働くのか、を調べる必要があるのです。

 

 

ハーネマンはキナを自分の体で実験し、その症状群を詳細に書き留めました。ホメオパシーでは、これとまったく同じことを、今も脈々と続けています。つまり健康な人たちが集団でそれをとり、その後、自分たちに出て来た症状群を書き留めていくのです。この作業を、ホメオパシーでは、

 

 

プルービング」(Proving証明、ドイツ語ではPrüfung試験)といい、そこに参加する人を

プルーバー」(Prover証明する人、ドイツ語ではPüfer試験者)と呼んでいます。

 

 

 

何かの薬を物質でとった場合、出てくる症状は大抵の場合、ガツンとわかりやすいものになりますが(発熱、吐き気など)、レメディーの場合だと、それらはもっととらえるのが難しい、微細で精妙なものとなります。ですからプルーバーは、レメディーをとってから約1ヶ月にわたって、自分の身に起きたことを、身体、感情、精神を問わず、詳細に書き留めていきます。

 

 

その後、プルーバーたちの記載はとりまとめられ、そこから共通する身体症状や心の動きなどが導かれます。こうして、そのレメディーについての症状がたくさん集まってくると、『マテリア・メディカ』のもととなっていきます。

 

 

 

 

④ マテリア・メディカ

 

プルービングで集められた症状群は、その後、臨床などでその効果が確かめられた症状だけが選りすぐられ、残っていく、という過程を経ます。またプルービングでは得られなかった症状も、臨床で何度か確かめられる場合もあります。

 

 

※ たとえば、Phosphorusという燐からつくられたレメディーの場合、「冷たい水を一気に飲みたがるが、その水がお腹の中で温まると吐いてしまう」という症状があります。それはプルービングでは出てきませんでしたが、臨床の中で何回も確かめられた結果、今ではPhosphorusの大切な症状群の中に入れられています。

 

 

そうした選りすぐられ、また加えられた症状の一群が、それぞれのレメディーのもつ特性として、『マテリア・メディカ』(直訳すれば、医薬の物質)、つまり薬物事典(写真下)に掲載されるわけです。

 

 

このようにして、選りすぐられ、集められてきた症状群は、精神から感情から身体まで、膨大かつ多岐にわたります。一つのレメディーの全体像を学び終えるには、毎日勉強できたとしても、最低1週間くらいはかかるのではないかと個人的には思います。

 

 

これがホメオパシーを習得することの難しさではあるのですが、ホメオパシーの勉強で面白いのは、この膨大な精神、感情、身体の症状群を何度も読み返していくうちに、そのすべてをつないでいる、一つのエッセンスとでも言いたくなるようなものが浮かび上がってくることです。

 

 

※ たとえば先ほどのPhosphorusだと、「境界のなさと、それからくる反応のしやすさ」いうことが、燐というレメディーのあり方を解くキーワードになります。境界がないので、周囲のいろんな出来事や物事が、自分の中に飛び込んできて、また自分もそれに反応して、すぐに疲れてヘトヘトになります。

 

また、この燐という物質自体、とても強い反応性をもちす。気中にあるだけで発火してしまいますので、水中に鎮めて瓶に入れ、さらに砂をいれた缶中に固定して、冷暗所で保管するほどです。このエッセンスから、先ほどの身体症状を読み解くとどうなるでしょう?

 

Phosphorusの人は、非常に反応しやすいのです。病気のときなんかには、とりわけ反応しやすい状態です。そこで、冷たい水を(境界なく)一気に飲みたがります。そうすることで、水中に保管された燐のように、反応性をしずめます。けれども、その水がおなかの中でぬるく温まってくるやいなや、もう反応性がわき上がってくる。そしてまた(境界なく)吐いてしまう、というわけです。

 

 

また、ホメオパシーには、ハーネマンの『マテリア・メディカ・プラ』をはじめとして、たくさんの著者が、さまざまな形でのマテリア・メディカを書いており、それぞれがもついろんな持ち味もまた、ホメオパシーを学ぶ醍醐味の1つです。

 

 

 

⑤ レパートリー

 

このマテリア・メディカに載っている症状を、1つ1つすべて覚えられればどんなにいいことか!と思います。1つ1つのレメディーを、自分の体でプルービングしながら増やして行った、創始者ハーネマンならできたのかもしれません。しかしながら、なかなかそんな能力のある人はいないのは現実です。しかもレメディーの数は、ハーネマンの時代(約200種類)から、今では約3,000種類にまで増えているのです。

 

 

けれどもホメオパスには大きな味方があります。それが、『レパートリー』という、症状索引集になります。つまり、症状から検索して、その症状をもっているレメディーの一覧を見ることができるわけです。

 

 

※ たとえば先ほどの、「お腹の水が温まったら吐く」という症状から検索すると、「Stomach-Vomitting-drinking-warm in stomach; as soon as water becomes」という項目に、bism、Chlf、kali-bi、PhosPyrog、という5つのレメディーを見ることができます。レメディーの中でも、小文字は1点、斜字は2点、太字は3点、といったランク付けがあり、どのレメディーがその症状を表しやすいかがわかるようにもなっています(点数が高いほうが可能性は高くなります)。

 

 

1832年、ハーネマンの親友でもあり、弟子でもあったベニングハウゼンが、ハーネマンの命を受けてつくったのが、最初のレパートリーです。その後も、たくさんのレパートリーが出ましたが、1897年、ハーネマンと並ぶホメオパシーの重鎮である、アメリカのアメリカのホメオパシー医、ジェームズ・タイラー・ケントの出版したレパートリー(写真左)は好評を得て、今、世に出ているレパートリーはほとんどが、このケントのレパートリーを基礎として編纂され続けています(症状も、レメディーの数も、日々増え続けているのですから大変です)。最近のホメオパスのほとんどは、症状を入力して検索できる、PCソフトを使っています(写真下)。

 

 

 

 

 

(文:刀禰詩織)

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