Narayana出版

 

2014年2月14日

 

 

ドイツ生活も残り1週間になった今日この頃。ついに、知る人ぞ知る、Narayana publisherに行ってまいりました。

 

ドイツの南西部に位置する、バーデンヴュルテンベルク州。ハーネマンの時代から、各地でレメディー販売が禁止される中で、バーデンヴュルテンベルク州は、診療を追われた医師たちが集まり、ホメオパシーを守っていった、特別な地域だったそうです。自然派の伝統は今も息づいており、環境都市で知られるFreiburgや、市民が電力会社を立ち上げたことで有名なShönau、Mauenheimなどがあり、Narayana publisherは、その中でも、スイスとの国境ぎりぎりに位置する、めちゃめちゃ小さな町、Kandernにありました。(やはり再生可能なエネルギーを求める思想と、ホメオパシーのそれとは重なるのですね)

 

小さな町ではあるのですが、Narayana publisher自体は、その町のたぶん中心地である、Blumenplatzという広場に面した一等地にあって、なんと二棟にわたって事務所を構え、50人の従業員を抱えている、この地域ではたぶん、かなり大きいんじゃないかと思える会社でした。一階には診療所もあって、3人の医師ホメオパスが診療にあたっていました。二階、三階には出版部があって、合計で40近い机と椅子が並んでいました。圧巻。

 

一つめの棟の一階には、かわいいレメディーケースや、小瓶、処方箋などの関連グッズ、ドイツ語の本やDVDと、その配送部、その隣りの棟の一階には、みんなが「England(イギリス)」と呼んでいる、英語の本やDVDと、その配送部がありました。宝の山に囲まれたようで、そんな機会に恵まれたことのない人間としては、興奮しまくりの一日。みっちり3時間くらい、宝の山に埋もれ、本を選ばさせてもらいました。

 

買おうと思っていた本が、中を見るとあまりほしくなかったり、買おうと思っていなかった本が、中を見るとかなり読んでみたくなる本だったりして、やっぱり本は、手に取ってみないとわからないもんだなと。そんなわけで、たぶん7万円分くらいの本とDVDを買ってしまいました。もう当分買いませんから〜許して♡

 

何度も配送でお世話になっている、Ursula Heckertさんに中を案内してもらいました。Heckertさんも、ホメオパシーの講座には出たり、勉強したりはしているけれど、診療はしていないそうで、Heckertさん以外の従業員の人たちもみんな、ある程度はできるけど、診療は医師ホメオパスに一任してあるということでした。

 

ドイツには「Heilpraktiker」という資格があり、その資格でホメオパシーを処方する人も増えてきたのだけれど、中にはとてもひどい処方をする人も多くいることを憂えておられました。確かに、腕のいいHeilpraktikerも、中にはいるのだけれど、と。たぶん、そうした事情から、医師としての資格を持った人がホメオパシーをするほうがいい、ということで、この会社は一致してあるのではないかと思いました。

 

確かに、3人も医師ホメオパスがいるんだったら、こんな小さな町では、十分なのかもしれないですね。でも、ホメオパシーは、診療が一番勉強になるし、楽しいのだから、せっかくできるのにしないのはもったいないなあと思っていると、診療はしないけど、アドバイスくらいはしますよ、とおっしゃっておられました。

 

私が最近処方した、自分の娘や一緒にいた友人の話になると、Heckertさんも、「ホメオパシーは、本当に効果的です。本当に大切な医療です」と、深くうなずいておられました。

 

Kandernにこの会社が設立されたのは、30年以上前の、1980年のことでした。ほかのホメオパシー出版社と違うところは、自分たちで出版する本に加え、世界中のホメオパシー関連本を取り寄せて、販売しているところだそうです。けれど、発足当時に比べると、だんだんホメオパシーの専門書などの需要は減っているということでした。

 

どうして?と聞くと、ホメオパスの後継者が育っていない、という答えが帰ってきました。少し前まで、フライブルグ大学には、医学部に、ホメオパシー専門の教授がいたそうです。そして、医学生向けに、大学内で本の販売コーナーを出しに行く時代もあったそうです。しかし、その教授が引退し、その後継者もいないままに、そういうこともなくなってしまいました。

 

どうしてですか?と聞くと、やはり医薬業界のホメオパシーバッシングは強く、ホメオパシーのことを科学的じゃない、魔女の所業だ、と揶揄される。医薬業界とのそうした攻防は、ずっと続いているんだ、という話でした。

 

一方で、ホメオパシーの治療を必要とする人は、年々増えている、とHeckertさん。一緒にいた友人が、「どうして治療を必要としている人が増えているのに、後継者が育たないのですか?」と聞くと、Heckertさんは、「80、90年代には、ホメオパシーを真剣に学ぼうという人たちが多くいて、その人たちが今、どんどん引退の時期に入っているのよ」と言っていました。

 

なんで後継者が育っていないのかについては、よくわからないままだったけれど、一人前になるのにかなりの時間とお金がかかるようなことを、やろうというような、気概のある人が減ったのかなと、勝手に想像していました。AugsburgのHundseder先生ご自身も、10年間はホメオパシーでは食べられず、アルバイトをしながら、治療の腕を磨いていったとか。大学などで全日制の勉強が保証されない限りは、それくらいの根気とやる気が、どうしても必要になる療法です。

 

Hundseder先生の教室にもお邪魔したけれど、確かに、そんなに真剣に学んでいるような人たちには出会えませんでした。Hundseder先生ご自身、こう言っておられました、たとえホメオパシーの学校に行ったとしても、本当にホメオパスになっていく人は、ほとんどいない。それでもホメオパシーは、学ぶこと自体に意味があるからね、と。

 

でも、もしかすると、80、90年代にいいホメオパスが育ち、その人たちに任せっきりになってしまった時代が終わりに近づいている今、本当に後継者がいなくなったときには、また再度、本気で取り組む人たちが、必要に迫られて出てくるのかもしれません。逆境が、決してマイナスではないことを、我が身にも置き換えて思いました。私自身、もしホメオパシーが今、日本でスタンダードだったなら、やらなきゃという必然性は感じてなかったかもしれないし。

 

こうした背景から、Narayana publisherの今のヒット商品は、ホメオパシーよりも、Vegan(ベジタリアンをより厳格にした人たち)向けの食品になってきているそうです。その注文が、全国、世界各地から来ているそうです。そんなふうに消費者のニーズにこたえなければ、会社の存続が危ないですもんね。本でも、アーユルヴェーダ関係の本とかを多く取り揃え始めているそうです。

 

こうやって会社が興り、商品が並ぶということは、どれくらいの顧客がいるかに依っている、つまり、興味をもつ人たちの人口がどれくらいいるか、ということの表れなんだと、実感しました。今、ヨーロッパを中心に、ホメオパシーは少し下火になっているのかもしれないけれど、ホメオパシーの栄えていた少し前の時代の富が、今の本棚に所狭しとならんでいて、そしてまたいつか、ホメオパシーの本棚が増えていく日がくるのでしょう。

 

 

人がムーブメントをつくり、

またムーブメントが人をつくる。

私は今、どこにいるのかな。

 

 

日本でも、きっとホメオパシーを愛好する人の数が増えれば増えるほど、こういう本棚や店舗ができる時代がくるんだろうな。そんな夢の光景を、いつか見てみたい。

 

 

P.S.

Narayanaは、日本のプラクティカルホメオパシーと関係を持った時期があったのですが、そのときはまだ、その実態をよくわかっていなかった、ということでした。ドイツには、クラシカルかプラクティカルかというくくりはなく、ホメオパシーとは基本的に、一度に単一レメディーを一粒処方し、時間をあけて待つ、そういうものだという認識です、ということでした。

 
 
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